珈琲にかける思い ~5代目社長 園田高久~
三喜屋珈琲を創業したのは私の祖父です。私は物心ついたころから、コーヒーの香りの中で育ちました。コーヒーを焙煎する祖父の傍らには、いつも幼い私が立っていたものです。
焙煎したばかりのコーヒーの芳香、丁寧に立てたコーヒーの豊潤な味わいは、いつしか私の五感に染み入り、私を虜にしました。そして、「コーヒーは生きてるんやで」「ひとつとして同じコーヒーはないからな」などといった祖父の言葉とともに、まるで愛でるかのように大切にコーヒーを扱う様子もしっかり脳裏に焼きついています。
技術だけでなくコーヒーそのものを愛する心。お客様を尊ぶ思い。そんな“コーヒー魂”を私は受け継いでいます。
「おいしいコーヒーを一番素晴らしい状態でお客様にお届けしたい」。私が常に抱いている思いです。今でも、現地に出かけて最高品質の豆を仕入れ、それぞれの豆に応じた焙煎、ブレンドを行うなど、現場での仕事に取り組み続けています。
「おいしいコーヒーづくり」のために、大切にしていることがあります。第1は「素材の見極め」。コーヒー豆は、生産国はもちろん同一国内でも産地によって味が違います。実は、コーヒーの木は暑さに強くありません。ですから、低地で栽培されたものと高地で栽培されたものとでは味に格差が生じます。昼夜の温度差が激しい高地産のものの方が、実が引き締まり、味も良くなるのです。また、年ごとに出来不出来がありますから、農場名に頼らず、その年に採れた最高品質のものを見極める目も必要です。
第2は「焙煎」。豆の硬さや水分量によって、当然、火のかけ方は変わってきます。生豆と向き合ってその状態をしっかり把握し、豆の本質やその良さを十二分に引き出す焙煎方法をとらねばなりません。
第3は「鮮度」です。コーヒーの命でもある香りは、焙煎から時間を経るに従って逃げていきます。新鮮なコーヒーほど高い香りを楽しんでいただけるわけです。
コーヒーは嗜好品です。安心・安全であることは当然ながら、おいしくなければなりません。ただ、味覚は千差万別ですから、コーヒーの味にもそれぞれお好みがあるはずです。
私は、そんなお一人おひとりのお好みに最もマッチしたコーヒーを提供したいと思っています。そのために大切にしているのがヒューマン・コミュニケーションです。お客様との対話を通して販売員がお好みの味やイメージを伺い、最もマッチするコーヒーをお勧めするというのが基本方針です。
私は常々、お客様のニーズに応じたコーヒーを提供するためには、コーヒーに携わる人々は、コーヒーの正しい知識を修得し、高い技術を身につける必要があると考えていました。
そして、10年ほど前、コーヒー組合が農林省の指導のもと「コーヒー・インストラクター」検定を行うことになった際には、その立ち上げメンバーとして奔走しました。私自身もインストラクター検定を受験して資格を取り、さらに、インストラクター育成講師の資格も取得しました。現在は、コーヒーメーカーとしての使命を全うするとともに、真に力のあるコーヒーの専門家を養成したいと力を注いでいるところです。
日本人は無類のコーヒー好きだといわれています。しかし、漫然とコーヒーを飲んでいらっしゃる方が多いのではないでしょうか。せっかくのコーヒーです、もっと楽しまれてはいかがでしょう。
まずは、信頼できる販売員のいる店で「やや酸味があって、香りが高く、後味が爽やかなもの」「苦さの中にも甘味が感じられ、膨らみのある味わい」など、もっと我儘にお好みをお伝えください。そして、その場で挽いてもらいましょう。大量に求めるのではなく、数日で飲み切れる量だけ購入するのもポイントです。
コーヒーを立てる際は、お湯を注いだ時に沸き立つ香りもゆっくり楽しんでいただきたいと思います。きっと、コーヒーのおいしさを再認識されることでしょう。
三喜屋珈琲のスタンドでは、お客様のご注文を受けてから1杯分ずつ豆を挽きコーヒーを立てるワンドリップ・ワンカフェ方式をとっています。それも、立てる際の香りが味わいの大切な要素だと考えているからです。
一人ひとりのお好みにあわせて、もっとおいしいコーヒーを。私たちは、コーヒーでもっともっと笑顔を増やしていきたいと思います。
園田高久 代表取締役 社長
1965年生まれ
- ◆経歴
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- 1991年 三喜屋珈琲(株) 入社
- 高島屋 大阪店 配属 店内2kg 焙煎機 焙煎担当
- 1994年 生産管理部 熱風・直火・炭焼焙煎機担当
- 2000年 ISO9002 品質管理責任者
- 2007年 取締役に就任
- 2012年 代表取締役 社長 に就任
- ◆資格
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- 2011年 全日本コーヒー商工組合連合会 認定
- J.C.Q.A(全日本コーヒー検定委員会)
- コーヒーインストラクター1 級
- 2012年 全日本コーヒー商工組合連合会 認定
- J.C.Q.A(全日本コーヒー検定委員会)
- コーヒーインストラクター講師